金子が解説!見どころ聴きどころ 3 「入道死去」

平家物語〜語りと弦で聴く〜滅亡の焔

2016@座・高円寺2(Photo by bozzo)

これまでに何度も語っている「入道死去」。
章段の組み合わせによって、受ける印象が変わるのが面白いです。2019年の公演は清盛生誕900年記念だったので、全身清盛になっておりましたが、今回は「南都焼討」がテーマで、清盛と重衡の二人の対比なので、少し客観的な視点で見ているのかもしれません。

あらすじは、こんな感じ。
治承五年(1181)閏二月。奈良を焼き討ちして二ヶ月になるころ、東国、北国に続き、九州、四国の武士たちも平家に背いて源氏側についたとの知らせが次々に入ってきます。全国に半平家の狼煙が上がったのです。清盛の次男、宗盛が関東へ出兵しようとした矢先、清盛が高熱を出して倒れました。清盛が重病との噂を聞き、京中の人々は「ほら、見たことか」とささやきあいます。奈良の大仏を焼いた報いに違いないとみな思っていました。比叡山の千手井の水を運んできて体を冷やしても、水はすぐに湯になり、ただ事ではない様子でした。清盛の妻の二位尼は、馬頭牛頭の獄卒が、激しく燃えている火車を引いて地獄から清盛を迎えに来た夢をみました。清盛の行先は無間(むけん)地獄だというのです。ありったけの財宝を奉納して、神仏に祈りますが効果はなく、ついに清盛は「あつち死(じに)」します。清盛の遺言は「供養はいらない、頼朝の首を墓にかけよ」というものでした。生前は大勢の人がつき従っていた清盛が、たったひとりで冥途に向かいます。遺骨は摂津国、経の島に収められました。

猛き者がついに滅びました。諸行無常です。

ものすごいシーンなのですが、言葉数は少なく、琵琶法師が演奏を駆使して語ったのではないかと想像しています。ベーシストの須川崇志さんがどんな音で表現してくれるのかお楽しみに!もうゾクゾクします。


さて、現代医学的には、清盛はマラリアだったのではないかとか、髄膜炎だったのではないかと推測されています。

そこで、調べました。地獄のことを。

そうしたら、地獄がものすごくシステム化されていて面白いのです!
当時は地獄の存在を皆が本当に信じていた時代だったのでしょう。殺生、ウソ、邪淫、飲酒、親殺し、僧侶殺しなど、犯した罪の多さ・大きさに合わせて、落ちていく地獄のレベルは決まっており(八大地獄や十六六大地獄と言われる)、それぞれの地獄で受けるおそろしい拷問の種類(剣の山で引き裂かれたり灼熱の炎で身を焼かれたり…それはもうすごいんです)なども決められていました。

そして、何よりも興味深いのが、それぞれの地獄には刑期が定められていて、一番軽い地獄でもなんと1兆6653億年!!一番重い無間地獄に至っては、1中劫=半永久!!!経ないと無間地獄から次へ転生することが出来ないのです。

ということは、清盛はただいま無間地獄に滞在中ですね?今落ちたら会えるということですね?なんて思いながら、よくよく読むと、真っ逆さまに落ち続けて無間地獄まで片道二千年かかると書いてあるではありませんか!!

清盛はまだ落下中です。無間地獄にたどり着いてません。

そして「この地獄に落ちる罪人は、死の三日前から中有(転生待ち)の段階にも地獄と同じ苦しみを受ける。」

これですか〜!!

清盛は己が落ちていく無間地獄の苦しみを生きながらうけつつ死んでいったのかもしれません。地獄の存在を信じていた時代、死後に恐ろしい苦しみが待っているのはものすごい恐怖だったわけです。重衡もきっとそうですね。

だから人々はこの世で行い正しくあろうと努めたのです。

テレビのニュースに映る政治家の顔を見ながら、この人達に「地獄」というものを教えて差し上げた方がよいのではと思いました。

俳優金子あいとジャズベーシスト須川崇志が時空を超えて表現する「平家物語」をぜひ目撃しに来てください。


平家物語~語りと弦で聴く~【滅亡の焔】公演 詳細はこちら

座・高円寺2
2021年10月28日(木)16時
29日(金)13時/18時

チケット(一般4,500円、学生<30歳以下>2,000円)
お申し込みはauaplus@gmail.comへメール
または090-1232-1363へお電話で



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