いにしへの奈良の都の八重桜 けふ九重ににほひぬるかな
〈八重桜は九重に咲く〉English subtitles available/日本語・英語字幕
宮中に出仕することになった女房は通り名を使います。伊勢大輔の家は代々伊勢神宮の神職を務めていたので、伊勢大輔と名のりました。曾祖父の大中臣頼基、祖父の能宣、父の輔親、代々の歌人が勅撰集に入集している家は「重代」(じゅうだい)と呼ばれる特別な存在でした。特に祖父は後撰集撰者です。伊勢大輔は周囲の大きな期待を背負って出仕し、「じっちゃんの名にかけて」すばらしい和歌を披露しました。
伊勢大輔の個人歌集が何種類か伝わっていますが、それらの詞書をまとめると、八重桜を中宮彰子に贈ったのは奈良の興福寺の扶公法師、先輩の紫式部が「今年の受け取り役は新人にまかせたわ」(=今年のとりいれ人は今参りぞ)と伊勢大輔に役を譲ったそうです。
和歌が評判になる3つのポイント。すばやく詠む。その場にあるものを詠む。掛詞、縁語などの技巧を使う。伊勢大輔の歌はすべての要素を完璧に満たしていて、調べも美しかったので、〈たいへんよくできました〉の最高評価をいただきました。
光琳かるたの取り札には、八重桜のほかに和紙と文箱が描かれています。歌学書の「袋草紙」(藤原清輔著)に、伊勢大輔は和歌を詠むよう言われて、文箱を引き寄せ、墨をするわずかな間に「いにしへの」の歌を思いついたとあるので、その場面を絵にしたようです(文 野澤千佳子)
★典拠 伊勢大輔集 袋草紙
★使用した画像:東京国立博物館蔵 源氏物語図屏風(初音・若菜上)、東京国立博物館蔵 源氏物語図屏風(絵合) 出典:ColBase (https://colbase.nich.go.jp)
★「おうちで読もう百人一首」シリーズは、劇場に足を運んでいただけない今、ステイホームのおともとして古典を楽しんでいただきたいと始めました。倉敷の古典の専門家・野澤千佳子が個性豊かな歌人達の面白エピソードを盛り込んで脚本を書き起こし、東京の俳優・金子あいが、毎回、和歌の作者として登場。作品の背景やこだわりを生き生きと喋り、撮影、編集、背景のデザインまで全てを自宅で作っています。そして音楽は琴奏者の大月邦弘が出雲から参加!衣装家の細田ひなこが宅配便で衣装を届けるといった具合に、まさにテレワークで作りました。ステイホームが終わってもぜひご家族で楽しんでくださいね♪ 教育現場での活用も大歓迎です。
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出演・撮影・編集・デザイン:金子あい /脚本・監修:野澤(鳥井)千佳子/音楽:大月邦弘/英語字幕:浜本妙子 /衣装協力:細田ひなこ
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